三浦しをん『風が強く吹いている』新潮社

風が強く吹いている

走れ、「速く」ではなく「強く」。目指すは箱根駅伝。直木賞受賞第一作!

君だったのか、俺が探していたのは。走るために生まれながら、走ることから見放されかけていた清瀬と蔵原。
二人は無謀にも陸上とは無縁だった八人と「箱根」に挑む。走ることの意味と真の“強さ”を求めて……。
新直木賞作家の本領全開、超ストレートな大型青春小説。



三浦しをん『風が強く吹いている』は、フィクションならではの濃密でドラマチックなストーリー展開の中で、面白い小説であることと、題材である箱根駅伝の魅力を伝えることとを両立させている、優れた作品です。

スポーツ青春小説が好きな方はもちろん、駅伝・長距離走の経験者の方や箱根駅伝の関係者の方にも楽しんでいただける作品だと思います。

●導入部あらすじ
高校時代のトラブルが元で陸上競技(長距離走)から追われ、路頭に迷っていた蔵原走(くらはしかける)は、四月から通う寛政大学の先輩、清瀬灰二と出会う。
走は清瀬の紹介で古く壊れかけたアパート竹青荘に下宿することになり、どうにか大学生活を送れるめどがたった。

四月になり、催された走の歓迎会の席上で、清瀬が突然、「竹青荘に住む十人で箱根駅伝出場を目指す」と宣言した。
清瀬に借りのある走たちは承諾せざるを得ず、清瀬の指導の下、箱根駅伝という頂点を目指して猛練習を開始するのだった。

●アピールポイント
1.フィクションである事を最大限に活用した面白い小説
補欠無しの十人(それも多くが陸上未経験者)で箱根駅伝を戦うという、あからさまな作り話なのですが、その欠点を補って余りある魅力があります。

ドラマチックでテンポの良いストーリー展開、個性豊かな愛すべき十人の選手達の青春群像、挫折を乗り越え走る主人公二人の成長、正月の恒例イベント箱根駅伝の実像、箱根駅伝を目指す選手たちの汗と涙。これらの全ての要素を詰め込んだ濃密な作り話だからです。

2.登場人物のパワーバランスが絶妙
主要人物である竹青荘の十人の扱い方が上手いです。箱根駅伝での各区での走りを含め、それぞれに見せ場があり、群像青春劇としても楽しめます。

天才設定をされている走が(競技以外では)活躍しすぎていないのも好印象です。この手のタイプにありがちなオレ様野郎でないことも含めて、感情移入しやすい主人公です。
さらに走に私怨を抱くヤな奴系ライバル、榊を懲悪的に扱わないのもいいです。

3.箱根駅伝の描写がリアル
コースや沿道の風景、さらにはリポーターや解説者の台詞などの描写が詳細で、リアルです。お正月の箱根駅伝の中継を観ているなら、ニヤリとさせられることうけあいです。

●気になった点
前述したように、結果だけ見ると荒唐無稽なサクセスストーリーという印象は否めません。小説としては面白いですし、駅伝の描写自体はリアルですから、結果がご都合主義でも許せる範囲だと思いますが…。

竹青荘の住人が良い連中過ぎて、漫画のキャラクターっぽいな、と感じてしまいます。
特に清瀬と神童(ニックネーム)は人間ができすぎていて、今時の大学生にはとても見えません。その分好感が持てる人物になっていますが。



アフィリエイトを貼ってみてはじめて気がつきましたが、漫画版も出ているのですね。
こちらも読んでみたいです。




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2008年05月13日 ま行の作家 トラックバック:0 コメント:0

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